LOCAL DESIGN LAB

真鶴へ

湯河原の手前、小田原の少し先、鶴が羽を広げたような土地の形をした神奈川県の小さな港町「真鶴」へ、パートナーと一緒に、一泊の旅に出かけてきました。

きっかけは、この真鶴に移住した川口さん・來住さんがはじめた”泊まれる出版社”「真鶴出版」。

2号店をつくるためのクラウドファンディングに、自分たちも応援させてもらい、そのリータンとして決まっていた稲城でのトークイベントの打ち合わせを兼ねて、一泊したのでした。

そもそも、自分が真鶴を知ったのは、雑誌「ku:nel」に載っていた真鶴にアトリエをもつブランド、「scrumpcious」のインタビュー記事。その記事のなかでふれていたのが、真鶴のこと、そして町が独自につくったまちづくり条例「美の基準」でした。

まちづくりの仕事に携わっていることや、「開発か否か」というテーマには、元々関心を持っていたため、真鶴で「美の基準」が作られた経緯を知り、実際に町役場から取り寄せて読み込んでいくと、外から押し寄せてくる開発の波から、真鶴の昔から続く暮らしを守ろうとする意志や、あたたかい目線で綴られていた暮らしの息遣いを感じて、真鶴は、いつか訪れたいと思っていた町だったのです。

美の基準については、下記のページがとても参考になります。

▼土地の力を紡いだ『美の基準』は、真鶴を何も“変えなかった”
https://www.hinagata-mag.com/comehere/10820
▼変えないことが価値をつくる、生活景がいきづくまちづくり 〜真鶴町「美の条例」
http://nextwisdom.org/article/1382/


そうして、真鶴に初めて訪れたのは、2015年。
行くこと以外何も決めず、パートナーと、ふらりと足を運んでみました。その時に、たまたまお会いできたのが、まだ移住して間もない、真鶴出版を立ち上げる前のお二人でした。

少し話ができ、同世代だったこと、地域に根ざして活動していきたいことなど、共通点があったこともあって、頻繁に連絡は取り合わないけれどよくチェックさせてもらっていました。その後、真鶴出版を立ち上げ、活動が広がっていったお二人は、2018年に2号店をつくるためのクラウドファンディングをスタート。空き家のリノベーションの一部を自分たちでやるということで、DIYの呼びかけがあり、壁塗りを手伝いにも行ったり、また真鶴を訪れるのを楽しみにしていたのでした。

真鶴のまちに張り巡らされている「背戸道」。奥に見えるのが、真鶴出版2号店。

真鶴出版の宿の面白いところの1つは「まち歩き」がついていること。
2号店の2階の部屋に泊まらせてもらった翌日、宿担当の來住さんの案内を聞きながら、真鶴のまちを歩きました。

2時間ほどのまち歩きのなか、お肉屋さんに寄ったり、干物屋さんに寄ったりしてのおしゃべりやお買い物。まちの人たちとの交流も楽しみの1つ。來住さんとお店の人たちとのやりとりをみたり、エピソードを聞いて、お二人は、このまちで暮らし、丁寧にまちの人たちと関係をつくってきたんだなぁと感じられました。

地域とつながった來住さんと歩くからこそわかる真鶴の魅力、垣間見れる住民同士の関係性。來住さんのガイドによって、ただ歩くだけでは見過ごしてしまうかもしれない「真鶴の歴史」に触れながらのまち歩きでした。


町内にふたつある港のひとつ、真鶴港を見渡せるポイント。
背戸道の先にあり、案内もないため普通に訪れただけだとなかなかすぐには見つけられない場所にありました。

真鶴特産の「干物」。新鮮で美味しかった。
真鶴出版の來住さん。宿泊には、まちあるきがついていて、ガイドしてもらいながら真鶴を歩く。
夜は真鶴出版から歩いてすぐの「KENNY PIZZA」へ。このお店も移住した夫婦が営んでいる。

この2日間で感じることができたのは「変わらないことも大切」だということ。

「美の基準」で守った、ずっと前から変わらず続いていた真鶴の暮らし。国のルールとも食い違う町独自のルールを真正面から「真鶴の意志」として決めてから25年。変わらずにあるふつうの真鶴の暮らしが続いていることが、いかに大切か。一泊した帰りに、はっと気づくのでした。

真鶴から小田原方面への電車に乗り、発車して間もなく、車窓から見えた真鶴出版の灯りに、確かにそれを感じたのです。

まわりの風景に違和感なく溶け込んで、前からそこにあったような2号店。
でも、真鶴出版のその灯りには、確かに真鶴の暮らしの気配が感じられ「美の基準」が伝えようとしていたこと何なのかが、はっと腑に落ちた瞬間でした。


2/3(日)に、真鶴出版のお二人を招いてのトークイベントを開催します!
泊まれる出版社 「真鶴出版」トークイベント / 発信と交流で、地域をつなぐ

真鶴出版のおふたりとは、同年代。2015年に真鶴に訪れた時に、移住して間もないふたりに偶然出会いました。
真鶴と稲城、お互いに地域に根ざして暮らし仕事をしている共通点があり、2018年、真鶴出版2号店の改修のためのクラウドファンディングに参加をして、そのリターンとして今回のトークイベントを開くこととなりました。

▼開催意図
「東京」という大都市を介さずに、地域に根ざし仕事を生み出したり、小さな地域同士で行き来する交流のネットワークが、ネット・リアルな場を通じて広がってきていると感じています。

真鶴と稲城や、たくさんある”大きな観光地”ではない「暮らすまち」の「発信と交流」について、考えを深めてみたいと思っています。ぜひ、交流の輪に加わってください。

▽イベント詳細はこちら
https://www.facebook.com/events/2937589329600688/

2019年1月21日